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分子進化における相転移現象 (エラーカタストロフィ)
エラーカタストロフィとは,
変異率の変化によって引き起こされる一種の秩序-無秩序相転移であり,
分子進化を理解する上で重要な現象の一つである.
変異率が低い場合, 分子(個体)の複製が正確なため系は適応度の高いもので
構成される(秩序状態).
一方, 変異率が高い場合, 分子(個体)の複製がでたらめになるため
適応度に関係なくその数は皆同じになる(無秩序状態).
変異率を徐々に上昇させていくと,
この秩序状態から無秩序状態への変化(図1)は
ある値を境に急激におこる[1,2].
しかし, 変異率は分子(個体)自らが自由に変えられるわけではなく,
置かれた環境(淘汰圧)に依存する.
そこで,
分子(個体)への淘汰圧の変化によって引き起こされる秩序-無秩序相転移(図2)について研究している[3,4].
秩序パラメータを用いた解析, 線形安定性解析, リアプノフスペクトルなどの解析手法を用い,
エラーカタストロフィという現象を統計物理学的な視点から調べている.
また, 本手法を変異率が変動するメタ遺伝的アルゴリズムとしてとらえ,
動的環境下での最適化問題への応用についても研究している[5,6].
図1. 変異率の関数としてのエラーカタストロフィ.
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図2. 淘汰圧の関数としてのエラーカタストロフィ.
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参考文献
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"Molecular Quasi-species",
J. Phys. Chem., 92 (1988) 6881-6891.
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Adv. Chem. Phys., 75 (1989) 149-263.
-
Y. Iwasaki and F. Yonezawa:
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[Full Text via ScienceDirect]
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Y. Iwasaki and F. Yonezawa:
"Numerical Study on Error Catastrophe of Adaptive Mutants and Their Stability",
Journal of Physical Society of Japan, 68 (1999) 1751-1759.
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Y. Iwasaki and F. Yonezawa:
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Proceedings of 1996 IEEE International Conference on Evolutionary Computation, pp.849-854.
-
岩崎 唯史, 米沢 富美子:
"点突然変異で駆動される遺伝的アルゴリズムの自律的適応機構",
日本コンピュータサイエンス学会誌 Vol.4, No.2 (1997) pp.117-125.
関連発表
- 岩崎 唯史, 米沢 富美子:
"進化の適応度と遷移確率",
日本物理学会1994年秋の分科会 (静岡大学, 静岡, 1994年9月4日).
-
岩崎 唯史, 米沢 富美子:
"分子進化のモデル",
日本物理学会1995年秋の分科会 (大阪府立大学, 大阪, 1995年9月28日).
-
岩崎 唯史:
"メタ調節機能をもつ分子進化のモデル",
京都大学基礎物理学研究所長期研究会「複雑系IV」(京都大学基礎物理学研究所, 京都, 1995年12月14日).
-
Y. Iwasaki and F. Yonezawa:
"Genetic Evolution through Stochastic Mutation",
1996 IEEE International Conference on Evolutionary Computation (Nagoya, Japan, 1996年5月21日).
-
岩崎 唯史:
"適応過程における突然変異率の変動機構",
第52回日本物理学会年会 (名城大学, 名古屋, 1997年3月29日).
-
岩崎 唯史:
"変異率,適応度の対称性とエラーカタストロフィ",
第53回日本物理学会年会 (東邦大学, 千葉, 1998年4月1日).
-
Y. Iwasaki:
"Lyapunov analysis on stability of adaptive mutants in a deterministic dynamical system",
XXth IUPAP International Conference on Statistical Physics (Paris, France, 1998年7月22日).
-
岩崎 唯史:
"適応過程における遺伝子の動的性質",
日本物理学会1998年秋の分科会 (琉球大学, 沖縄, 1998年9月26日).
-
岩崎 唯史:
"環境の変化によって引き起こされるエラーカタストロフィ",
日本物理学会2000年春の分科会 (関西大学, 大阪, 2000年3月22日).
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